Creative Company Colors
リレー小説

【第1話】

​作:松尾美香

ドラマやなんかでも刑事物の舞台って言ったら横浜が多いだろ?
確かに賑やかでカップルやら家族連れやらが多い地域から少し離れればそこには、違法薬物取引、賭博の温床になってる地域なんかもあるし、昼間から怪しい奴がうろうろしてるようなとこもある。
まぁ港町なんて密輸、密入国が後を絶たないのが当たり前だし、その中でも横浜は日本一外国船舶が入港する街だからな。
こんな水際の巡回も仕方ない――と言えば仕方ない、の、だが。

「先輩、崎陽軒の焼売のこと、シュウマイじゃなくてシウマイって言わないと横浜の人怒るって本当ですか?」
「知らねぇよ」
「え、じゃあじゃあ先輩はどう言います?シュウマイ?シウマイ?」
「どっちだっていいだろ」
「えー、でもシウマイって言いづらくないですか?俺はシュウマイ派だな。あ、やばっ!こんなん聞かれたら俺袋叩きにされるかも!誰もいない?大丈夫かな」
「うるせぇなお前は!目立ったら意味ねぇんだよちょっと静かにしとけ!」
「………すみません。じゃあ小さい声で。1個だけいいですか?」
「なんだよ」
「横浜の人って、やっぱ語尾に“じゃん”って付けるんですか?」
「~~~~~~~!!」
殴りたい気持ちをぐっと抑えて、とにかく無視することに決めた俺は、完全に顔ごと車窓の方を向いた。

何故、慎重にならざるを得ない巡回にこんなバカを引き連れているのかと言うと、話は今朝に遡る。
「本日付で薬物銃器対策課に配属されました、唐津湊巳(からづみなみ)です!よろしくお願いしまっす!」
栗田課長に連れられて入ってきた新人はやたらとデカい声で名乗り、敬礼した。
うーわ苦手なタイプだなと思った瞬間、
「神崎、コイツの世話、頼むな」
「はぁ?!え、なんで俺なんですか」
「お前もそろそろ後輩の面倒見なきゃいけない歳だろうが」
「同じような歳なら他にも」
「神崎、ってあの神崎虹人さんですか?」
「あのかどうかは知らんが、そう。コイツが神崎虹人だよ」
こんな名前が他にもいる訳がない。
「うわぁ、お噂はかねがね!嬉しいなぁ、憧れの神崎さんに付けるなんて!」
「いや、まだ」
「ほうぅ良かったじゃないか、憧れの、だってよ」
いやアンタ笑いを嚙み殺した顔してるじゃないですか。
「よろしくお願いします!先輩!」

承諾したのは別にコイツに絆された訳じゃなく、ただの上司からの圧力だ。
栗田課長は今でこそ穏やかなものの、かつてはマル暴で腕を鳴らした強面で、怒らせるとどうなったもんか分かりゃしない。
それにしても、憧れの先輩に初日からシウマイだのじゃんだのの話をするか普通?
と回想混じりに考えていると、俺の頭越しに埠頭を見たらしき唐津が声を上げた。
「あっ!あそこの船、怪しくないですか?」
「??どれ」
「あの、黒と青の線が入った。黒ずくめの奴らがこんな時間に荷物持って出てきてますよ」
目を凝らすと、確かに何か動いているような気もする。
「お前、良く見えるな。目ぇいいのか」
「両目とも3.0です!多分」
「3.0?多分て」
「これ以上は測れないって言われました!あはは」
「あーまぁいいや。行くぞ」
「はい!」
どこで育ったらそんな視力でいられるんだと思ったが、今はそれどころじゃない。
車を発進させて、埠頭の方へと向かう。
「うわー何ですかね何ですかね、密輸?ヤクの取引?」
「いいから黙ってろマジで」
あまり近付き過ぎてもいけないので、離れた物影で車を停めた。
「慎重にな」
「はい」
しかし辺りは大分暗い。方向は分かるが、離れた場所でその様子が見えるかどうか…
応援を呼ぶかと携帯を出した時だった。
「俺、見てきますね!」
「は?!」
「大丈夫です、目いいんで!」
さっさと走り出した唐津を呼び戻そうとした時、その頭上に何かが動いた気配がした。
あれは…!
「おい、上!」
「え?」

――ドサッ!

その大きな何かは、運悪くか意図的にか唐津の真上から落ちてきたが、反射神経がいいのか、奴はそれをうまく受け止めたようだった。そう、その大きな何かは。

「親方!空から女の子が降ってきた!」

誰が親方だ。

【続く】

【第2話】

​作:村上貴弘

埠頭に停泊している船の甲板に一人の男。

岡林は煙草を銜えながら沈む夕日を眺めていた。

今回の仕事が終われば久しぶりに長めの休暇が取れると言われているが、いつものごとく急な呼び出しが入るに違いない。

この三年、まともに陸の上でゆっくりできた事がない。

仕事と言っても、外国人がちゃんと働いてるか眺めているだけだから特に忙しくなるわけではないのだが、それはそれで疲れるものだ。

 

何度目かの煙を吐き出した頃に後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。

「おかばやしさーん」

なんとも間抜けな呼びかけだ。

「どしたんすか、こんな所で?おりないんすか。久しぶりの陸地ですよね」

こいつは、桐山。一応俺の部下だ。

と言っても、俺が年中船の上だから日本の港に寄った時ぐらいにしか顔を合わせることはないのだが。

「どうせ降りてもすぐ乗るんだ」

「動かすのは夜っしょ。まだ結構時間ありますよ?俺ならマックとかいっちゃいますね」

うるせぇな。勝手に行けよ。お前そんなだから痩せねぇんだよ!とは口にしない。

「この時間の甲板が好きなんだよ」

「へぇ、ほんと船好きなんすね。じゃぁ、俺事務所に居ますね」

去っていく桐山の背中に

「好きなわけねぇだろ」

と呟きながら新しい煙草に火をつけた。

まったく、いつまでこんな事やってんだか。

 

俺たちの運んでいる『物資』は勿論合法の物ではない。

危ない仕事ではあるのだろうが、検査が入った所でバレる事はない。少なくとも今までは。

だが、万が一も考えられる。こんな所で俺の人生終わってたまるか!念には念をと、空いたじかんで貨物庫に降りることにした。

ひんやりとした静かな空間。

うん。嫌いじゃない。

自分の足音しか聞こえない。

ゆっくりと足音を楽しみながら歩いていると、ガサッと何かが動く音が聞こえた。

荷物の管理を任せている男か?

「ホセ?」

返事はない。

音のした方へ近づき

「誰だ!出てこい!」

居るかもわからない誰かに声をかけた。

気のせいかと思った瞬間。ガサガサと人の影。

女?いや、女の子?

俺と目が合ったかと思うと走り出した。

あっ、くそぅ。なんだ。

「待て!誰だ!」

勿論相手は答えてくれない。

くそっ、どうする俺!ほっとく?追う?

あー!めんどくせぇ。

「明日から休暇だってのによぉ!」

多分得られない休みの願望を口にしながら追いかける俺。

 

〈続く〉

【第3話】

​作:濵田茉莉奈

物語の続き

 

とある目が覚めたとき、身体の形、機能的にも

あ、人間だ自分。と思えた。

人間には人生という過去と未来がある。

でも今の自分にはそれに値するものがなさそうだった。

 

無という感覚でもない、だからと言って寂しさや悲しさがあるわけではない。

状況の把握が早く、なぜか全て受け入れることができる。

目覚めたとき側にいた人から成人女性らしく話されてたので女らしい。

名前は"メメたん"

特に異論反論もない。

カルテらしきディスプレイに"Meta"って記載があったけど"メメたん"です。

 

あと、recipeという空のファイルを渡された。

特に使わないけど持っておいてくれと言われてポケットにしまった。

 

「何をしても、どこへ行ってもいい。

たまに「チリーン」とベルのような音が鳴るから、その時だけファイルを開けて見てくれ。」

 

知らない奴から言われたのはただこれだけ。

 

それから何日も自由に過ごした。

生活の仕方はなんとなくわかっている。

好きなところへ行き、好きなものを食べて、ご近所とも仲良くなった。

 

たまに「チリーン」と鳴るベルは自分自身、メメたんから鳴っているようだった。

ファイルを開けてみても何も変わり映えはない。

ただ、メメたんが行ってない場所や経験や記憶がベルが鳴る度に増えている気がする。

 

ある日大型の船に乗った。

夜釣りができるという!楽しみだった。

釣り中「チリーン」と鳴った。魚が逃げてしまう!と思い慌てて船内に移動した。

 

ただよくよく考えるとこのベル音、他人に聞こえているのだろうか…?

「聞こえてないかもなー」と

ふふふと笑いながらファイルを開けるが変わり映えはない。

「yokohama?」には行ったことがない。

今は長崎にいる。

 

あと何でも格納できる頬袋が突然できた。

頬袋に入れたものはどんな機械でも見つからないらしい。

ただ12時間以上入れっぱなしだと痛んでしまう。

 

そしてすでに頬袋はパンパンだった。

これから夜釣りで釣ったお魚食べるところだし・・・

食べきれなかったら頬袋に入れてTakeOutできるじゃん!と思い、すでにパンパンだった頬袋の右側の中身をその場に吐き出した。

 

船内は暗くて吐き出したそれが何なのかはわからないが美味しいものではない。

その時、「誰だ!出てこい!」

と声をかけられた。

 

そんなつもりではなかったけれど、確かにこの行為は嘔吐にしか見えないかも…。

「船内じゃなく海へ吐け!」ってことですよね(汗)

すみません…!

 

と思いながら左側の頬袋から吐き出す準備をしてたため、声も出せずに、とにかく船外へ!

海へ向かって走ったメメたんでした。

 

つづく→

【第4話】

作・加藤智彩

「はぁはぁ…」

「くそっ、何なんだよ一体」

「先輩!あいつ何なんですかね!?」

「おい、あんた大丈夫か?」

「弾、当たってましたよね?ファンタジー!」

「ちょっと黙ってろってマジで」

 

『今日は本当に碌なことが無い』走りながら神崎は思った。

少女の次に自分の頭上に振ってきたのは、細身で筋肉質な男だった。

思わず全力で受け止めてしまったが、絵面の酷さは否めない。

男は降り立つとすぐさま何かに向けて発砲した。弾は脇腹を貫通した筈だった。

それなのに…その何かは唸り声をあげてこちらにも襲い掛かってきた。

咄嗟に投げ飛ばしたが利いていないようだった。

最初に走り出したのは先ほど空から降ってきた女の子だった。

続いて唐津。弾が尽きたのか、ふらついて倒れこむ男に肩を貸し、神崎も走り出した。

明らかに組織の人間である男とすさまじく足の速い少女、そして先ほど出くわした人間であるのか疑わしい何か。

一体何が起こっているのか…。

――――――――――――――

完全に下手打っちまった…。

放っておけば良かったんだ、よく見ればいってまだ20歳そこそこのがきんちょじゃねぇか。何か見られたところでそれが何か分かる筈も無いってのに。

完全に好奇心が勝ってしまった。これだから女に関わると碌な事がない。

散々学んだ筈なのにな、と今更独り言ちている場合でもないか…。

右肩が焼けるように熱い。噛まれた…よな?

あれは確かに荷物番を任せていたスペイン人のホセだった。

女を追って走っていたら突然襲い掛かられた。

物凄い力で掴みかかられて、揉み合いになって噛みつかれて、思わず俺は、携帯していた銃でホセの太もも辺りを撃ちぬいた。一瞬の隙をついて逃れることには成功したが、どういう訳か奴は撃たれた足を引きずりながらも追いかけてきた。普段は大人しく気の弱そうな奴だ。それが血走った目で唸り声をあげて…あれはまるで…

「ゾンビみたいでしたね」

岡林の思考を断ち切るように、唐津があっけらかんと言い放った。

「はぁ?なんだそりゃ」

神崎は持っていたハンカチを引き裂き、岡林の肩口からどくどくと流れる血を縛って止血した。

「え?知らないんですか!マジっすか。ウォーキングデッドシーズン11まで観ましたよ」

「それは知ってるよ。バタリアンだろ?」

「マジっすか?そこ行きます?」

「いや、王道だろ。いやそもそもそこじゃねぇ」

「ゾンビ映画はヒューマンドラマっすよね」

「だからそこじゃねぇって」

「なぁ」

放っておくといつまでも続きそうなやり取りに痺れを切らし、岡林は声をかけた。

「まず、助けてもらったことには礼を言う。だが、あんた達誰だ?こんな時間にこんなとこで何してる?」

「…それはお互い様だな。おまけにこんな物騒なもん。礼を尽くすなら、まずそっちから名乗るべきじゃねぇか」

「デートっす」

「…は?」

「いや、たまには変わったとこでデートしたいって虹やんが言うんで」

「誰が虹…」

「デートってつまり」

「はい、俺たち付き合ってるんで!ね?」

「あ…っああ…うん」

「あ!俺は唐田でこっちは虹やんです!」

「そ、そうか…俺は岡林だ。野暮なこと聞いて悪かったな」

「大丈夫っす!」

「…で、君は…?」

「あ、どうも。メメたんです」

「めめちゃん?」

「メメたん」

「愛称かな」

「名前です。うっ…もうダメだ」

「え?」

メメたんと名乗った謎の少女は、突然えづくと左頬から崎陽軒のシウマイ弁当を吐き出した。

「あぁ…痛んじゃってる」

「…シュウマイ?」

「シウマイっすよ、虹やん」

「うるせぇな」

「いや、そこじゃねぇだろ。今あんたそれ頬から出した?」

「メメたんです。箱の中にあったので」

「箱?箱ってまさか船の中の?」

「そう。お魚釣りながら食べようと思ったのに忘れてました。ふふ」

「箱の中にシウマイ弁当があったのか?」

「そうです。いっぱいあったから、一つくらいいいかなと思って。ほかの人も食べてたし」

「どういうことだ…?まさか物資がシウマイ弁当?」

「いや、あんたこそそこじゃねぇだろ」

「メメたん、何者っすか」

「メメたんは、女の子だよ。あ!」

 

メメたんは、突然ポケットから何やらファイルのようなものを出して眺めている。

 

「ファンタジーっすね」

「あのポケットにどうやって入れてたんだ?」

「ドラえもん的なことか」

「ますますファンタジーっすね!」

「それよりこれからどうする?とりあえず警察に」

「いや、悪いが警察はマズイ」

「そんなこと言ってる場合か?その傷、早く適切な処置をしないとヤバいぞ」

「近くの事務所に仲間がいる。まずはそいつに助けを求めよう」

 

神崎は迷った。このまま組織の人間と深く関わるとこちらにも危険が及ぶ可能性がある。唐津の滅茶苦茶な嘘が本気で信用されているとも思えない。しかし岡林一人を検挙したところで、摘発したことにはならないだろう。敵の懐に飛び込むべきか否か。しかもメメたんは一般人だ。いや、人なのか…?そもそもあの得たいの知れない生き物は放置していいのか?

 

「虹やんっ!」

 

試案する神崎の背後に、先ほどの得体の知れない何かが唸り声をあげて襲い掛かった。

逃げられない!そう思った瞬間、メメたんの頬袋が一気に膨らみ、何かが口からマシンガンのように飛び出し、怪物の頭を撃ちぬいた。

 

唸り声は消え、怪物は動かなくなった。

 

「倒した…?」

「なんだ今のは?」

「シュウマイ?」

「シウマイっす」

「だからそこじゃねぇ」

「なるほど、ヘッドショットか」

「ゾンビは基本頭を撃ちぬかないと死なないっすもんね」

 

怪物の頭には、メメたんから放たれたシウマイがめり込んでいた。

岡林は、かつてホセだった男を黙って見下ろした。

 

「そもそもなんでゾンビ化したんだ?」

「そりゃあアレっすよ、元はウイルス?」

「あとは感染した奴に噛まれたりとかだな」

「…ん?」

つづく

【第5話】

作・村上貴弘

嚙まれたら???

噛まれたな、俺。。。

岡林は、傷口を隠すように強く抑えた。

 

「でも、俺いつも不思議に思ってたんすよね」

「シュウマイの話はやめろよ」

「シウマイっすよ」

「もういいよ、なんでも」

「違うっす!噛まれたら感染するって事は体液?ウイルスが身体に入るとダメって事っすよね?」

「まぁ、そうなんじゃないのか」

「あんなに戦ったら飛沫感染するでしょ!全員アウトでしょ!!」

 

確かに。もしウイルスだとしたら、空気より重いのか軽いのかでも大きな違いがある。

いや、ゾンビなのだとしたら心肺は停止してるのだから息はしてないはず。

えっ??どういう事?

息をしてないのに唸り声を出せる?

無理じゃない?

無理だろ!

違う、違う!そんな事今考えてもしょうがないだろ。

 

「メメたんは大丈夫だよ」

「メメたんはゾンビにならないんすか?」

「そだよ」

「つまり、メメ…たんは抗体を持ってるのか?」

「違うよ!メメたんは、メメたんだからなのです!」

「やっぱそうっすよね!ですって、虹やん」

 

わからーーーん!!

何が?何で?どうして会話が成立してるんだ?

やっぱ?なにがやっぱそうなの?

んで、もう虹やんでこれから行く気だなお前。口に馴染ませようとしてるだろ。

 

「ちょっといいか…」

 

岡林の辛そうな声で我に帰った。

 

「すまん。すぐに手当てしないとな」

「いや、いいんだ。崎陽軒のシュウマイ弁当が船に沢山あったって?」

「そー!らしいな」

 

訂正を入れようとする唐津を遮った。

唐津の視線を感じるが、気づかないフリをする。

 

「会社からの差し入れじゃないのか?」

「そんな報告は受けてないし、今まで差し入れなんて一度もなかった」

「今、業績がいいからたまにはって事なんじゃないのか?それがどうした?」

「もしその弁当が原因でホセ…そこに倒れてる男が凶暴化したのであれば他にも凶暴化してるやつがいてもおかしく…」

「虹やん!!」

「なんだ、唐…田」

「さっきの船、人居なくなってる」

 

慌てて船の方を見るがやはり見えない。

ほんとかよ、こいつ。

 

「この時間に荷下ろししてるのは俺の船だけのはずだ」

「荷物散らばってるっす」

「ここから見えるのか?」

「あー、なんかこいつめちゃくちゃ目がいいらしいです」

「測定不能っす」

「とにかく、船に」

「いや、あんた凄い怪我だぞ。事務所に行くべきだろ」

「船の方が心配だ!それに船内に救護室がある」

 

やはり積荷が気になるって事か。

ここは慎重に動いた方が良さそうだな。

 

「そう…」

「流石っす!!船乗りの鏡っすね!」

 

おいおい唐津くん?

 

「メメたんも行くです。さっき頬袋から出してしまったの回収せねばです」

 

これまた不思議な事言ってるよ。

あー、もう!

さっきのゾンビみたいなのが溢れても困るし、行くしかないか。

 

「ほら、掴まれ。行こう」

 

静かな埠頭を4人?で船に向かって進んだ。

船に着くと荷物が散らばってる。

さっきまで運んでいた荷物を放り出して皆んな何処かへ行ってしまったようだ。

静かだ。

聞こえるのは波の音、メメたんの陽気な鼻歌とそれにいちいち反応する唐津の声、肩に寄りかかってる岡林の時折り苦しそうなうめき声ぐらいだ。

何が起こってる?

今にもスキップしそうな勢いで船に乗り込む2人を止めなければ。

 

「ちょっと待ってくれ!そんなスピードで動いたら彼の傷口が開いてしまう」

 

あぁ!と言う顔の2人。

何が起こってるのか検討も付かないのだとにかく慎重に進みたい。

ゆっくりと船内に入ると波の音が消え、より静かに感じる。

 

「誰か居ますかー!!」

 

唐津の声が響く。

返事はない。

 

「誰も居ないっすね」

「メメたんもやります!」

 

何故?

だが、同じように声が響くだけ。

 

「とりあえず救護室だ」

「すまない。このまま真っ直ぐ進んでくれ」

 

岡林を担ぎ直し進もうとしたその時、突然床が光り始めた。

 

「なんだこれは…」

「異世界転生きたー!!!」

「異世界???」

「ぎゃぁぁぁぁ、メメたん暗視モードだったです」

 

暗視モード?もう完全に人じゃないな。

目を瞑っているはずなのに眩しい。

何も頭がおかしくなりそうだ。

 

「くそー!!!」

 

何に悔しがっているのかわからないが、出てきた言葉はこれだった。

 

一体どれくらいの時間がたったのだろう。

眩しさもなくなりゆっくりと目を開けてみる。視点が定まらない。

ようやく目が慣れて、辺りを見回すと船内。

さっき?と同じだよな???

 

つづく

【第6話】

作・田中琢磨

「おい…どうなってる…」

返事はない。

「ふう…」

頭が混乱している。

こういう時は深呼吸して心を落ち着けて…

「すぅー…ふぅ〜…」

よし、目は慣れてきた。

俺は神崎虹人、記憶もある。

事実確認と行こうじゃないか。

ここはあの例の船、それは間違いない。

入ってきたドア、積荷、椅子の位置、何も変わっていない。

変わったことといえば俺以外の3人?が消えてしまった事だ。

「あいつらどこに…」

独り言ちているとゴゴゴゴと酷い重低音が鳴り響いた。

 

「ん?」

 

船が動き出した。

どういう事だ?

すぐに携帯電話を取り出してみるが電波がない。

俺が特捜機関等にいたら衛生通信でも使えたんだろうがただの一刑事には無理な話だ。

窓から外の様子を見てみると、そこは漆黒の闇。

何も見えなかった。

確かここは地下一階だったか…?

岡林?を担いでいたせいか疲労感が凄い。頭が痛い。あの光を浴びてから倦怠感もある。

とりあえずドアから出てみる。

 

ガチャ。

 

ドアから出て…

 

ガチャガチャ。

 

はぁ?

あ、開かない!!

閉じ込められた!?

どういう事だ、何が起こっている?

為す術なくもう一度窓を覗くが船はどこかに向け動いている事は間違いないが何も見えない。

諦めて積荷の捜査を進めるか…と思ったその瞬間。

 

コツコツ…と足音が聞こえ、ガチャ。

 

…鍵が開く音がした。

咄嗟に身を積荷に隠す。

ドアが開く。ギィーという音がすると

 

「メメたんはいりま〜す!」

 

はぁ?

頭が追いつかないが恐る恐る陰から覗いてみた。

「あ!」

「あ!」

思わず声を出してしまった。

メメたん?はこちらを発見するや否や駆け寄ってきて手を掴みぴょんぴょん跳ねながら

「せいこ〜!」

と喜んだ。

 

…何が?

「何が?」

 

動揺し過ぎて思っていた言葉が口に出る。

すると彼女?は「あ!ちりーん!」「まってー」と言うとポケットからそれには入らないであろうサイズの光る物体を取り出し、淡々と話し出した。

 

「初めましてワタシはヨーケン。ミスターKと呼んでくれてもいい。」

 

えらく機械的に話すメメたん…であったモノは先程までメメたんであった事を忘れてしまう程、別人だった。

 

「君は今長崎にいる」

「はぁ!?」

 

何かのドッキリか?!

栗田課長は何をさせたかったんだ!?

俺に何を求めている!?

 

「正確には長崎港を出て横浜へ向かう航路の途中だ。時刻は18時6分、今日は…月…ん日…天気は…」

 

頭がとっ散らかっていて会話が入ってこない。とりあえずドッキリでは無さそうだ。ん?

 

「待ってくれ今なんて?今日の18時?」

「そうだ。今日、世界は滅亡してしまう」

「何を…」

「この船が何を運んでいるか君も見たであろう。君には最初のパンデミックを止めて欲しいのだ。」

「あ…」

 

色々と思い出してきた。

そういえばどう見てもおかしい男―どうみてもおかしい女も目の前にいたが―がいた。

人間ではなくなってしまったかのような暴走した男。

シュウマイを発射してヘッドショットを見せた女。唐津は今どこで何を…

…また頭が痛くなってきた。

 

「共に居た2人もどこかにいる。健闘を祈る」

「ちょちょちょまっ!待ってくれ!」

「どったの」

 

メメたんだ。

ヤバい、あんまり聞いてなかった。

整理すると俺は5、6時間時を遡り、長崎港を出発したばかりのあの大型船に乗っていて、この船を横浜に着かないようにしなければいけない。…らしい。

事を起こすならもっと時間戻した方が良くないか…?

 

「ほえー」

「あ………?」

 

ドアを覗いているメメたん。

神崎も恐る恐る覗くと黒ずくめの衣装に身を包む外国人たちがひしめいていた。

 

「お友達になれるかなぁ」

「はぁ?」

 

続く。

【第7話】

《作・小菅博之》

さてこれからどうしたものか・・・

 

「さてこれからどうしたものかぁぁぁ」

「うわっ!なんで俺の考えてることがわかったんだ。」

「メメたんだからだよ?」

「そうか・・・・・・じゃぁしょうがない。」

 

この子の事を理解しようなんて思った俺が馬鹿だった。

知り合ってさほど時間が経過していないにもかかわらず、俺みたいな一般人には理解の及ばない出来事が多すぎる。

 

しかし、この状況は何だ。

<世界が滅んでしまう>なんて言われても、にわかには信じがたいし、なんで俺なんかがそれを止める使命を背負わなければならないんだ。

 

俺はそんな愚痴を吐きながら、日常からかけ離れた歪んだ状況をどう乗り切るか思考を巡らせていると、背後に嫌な気配を感じた。

その元を探るために、振り返ろうとする瞬間、様々な記憶が走馬灯のように去来し、得も言われぬ恐怖に全身を強張らせ、死という名の絶望に心が支配された。

 

「ジャキンッ!!!」

 

聞きなれない音。

頸椎を焼かれたような痛み。

体から「自分」が切り離され、床に落ちる鈍い感触。

そして、電源を落としたモニターのように景色が闇へと切り替わった。

 

 

「うぁぁぁぁぁぁぁ・・・・ハァハァハァ・・・どう・・・なってるんだ・・・・」

 

全力で短距離を走り終えた息苦しさと重度の二日酔いの症状が同時に発症したようだった。

とりあえず、パニックの状態を落ち着かせ、ゆっくりと目を開けてみた。

視点が定まらない。

ようやく目が慣れて、辺りを見回すと数分前に居た船内だった。

 

「なんだこれは、さっきと全く同じだ・・・・・」

 

ゴゴゴゴと酷い重低音が鳴り響き、船が動き出した。

相変わらずの疲労感、頭痛、倦怠感を覚えながら、目の前のドアに手を伸ばしてみる。

 

「開かない、これも同じか。」

 

コツコツ…と足音が聞こえ、ガチャ。

ギィーという音がすると

案の定メメたんだ。

 

「メメたんはいりま~す!」

「あ!」

「せいこ~!」

 

やはり同じ台詞と行動、そして光る物体をポケットから取り出す。

 

「お帰りなさい。思いのほか早いお戻りだな。」

 

初めての違うセリフだった。

 

「何がお帰りなさいだっ!これは一体どういう事だっ!」

「君は失敗したという事だよ。」

「失敗だぁ?」

「世界滅亡の原因となる最初のパンデミックを止めてくれとお願いをしたじゃないか。」

「拒否権も与えずに一方的に話を進めておいて、お願いだ?そういうのは脅迫っていうんだよ。」

「そう邪険にしないでくれ、これでも不憫だと思っているのだ。」

「何をいまさら!」

「世界を滅亡から救うには、君の活躍にかかっている。」

「だから勝手に話を進めるなっていってるだろう・・・」

「健闘を祈る。」

「おいっ!話をっ!!」

「どったの?」

 

メメたんに戻ってしまった。

状況的に何も進展してない、このままさっきと同じ事が起こるのだとしたら・・・・

また同じ目に遭うなんて御免だ。

 

「ほえー」

「お友達になれるかなぁ」

 

メメたんがさっきと同様にドアを覗いている。

恐る恐る覗くと黒ずくめの衣装に身を包む外国人たちがひしめいていた。

するといつの間にか背後に人の気配を感じる。

こいつだ。こいつに俺は殺された。

無意識に身体が反応し、鼓動が速くなる。

 

「だれだ!」

「うわっ!びっくりした!」

「あっさっきのひとー!」

 

それは、俺もメメたんも知っている馴染みのある人物だった。

 

「唐津?お前なのか?」

「やっぱり虹やんだ!よかったぁぁ・・・」

「近寄るな!」

 

自然と距離を取っていた。

 

「えっ、どうしたんですか。」

「どういうつもりだ!」

「何言ってるんスかぁ!どういうつもりもなにも!急に光に包まれたと思ったら貨物室みたいな所にワープしてて!そしたら周りには誰もいないし、怖いし、暗いし、臭いし、もう何が何だかわからないけど、とりあえず先輩たちを探さなきゃって思って探してたら、楽しそうに走っていくメメたんを見つけて必死に追いかけてきたんです!そうしたら・・・」

「わっ分かった、分かったから落ち着け。」

「ハァハァ・・・そしたら武装した奴らが階段から降りてきたんです。」

「外の黒づくめの奴らか」

「はい。ヤバいと思って咄嗟に通気口に隠れたんですが、奥から先輩の声が聞こえたんで進んでみたら。」

 

唐津は部屋の隅を指差した。

そこには大人一人がちょうど通れるくらいの四角い穴と本来塞いでいたであろう金属の網が転がっていた。

 

「ここに出たってわけか」

「はい!」

 

辻褄は合っている。とっさに出た嘘だとも思えない。

しかし、本当にこいつを信用していいのか。

首を落とされた感覚が未だに拭い切れない。

 

「お前・・・何か得物は持っていないのか?」

「得物って言われても・・・今日は地取りでしたから腰道具の携帯指示は出てなかったんで。」

「鋭利な刃物とか。」

「無いですよぉそんな物騒なものぉ」

「後ろを向いて壁に手を付けろ。」

「えっ!ちょっと!何も持ってないですって!どこ触ってるんですか!」

「いいから足を肩幅に開け。」

「もう疑り深いなぁ。そんなに武器が欲しいんですかぁ?」

「何も持っていない・・・か。悪かったな。」

 

それはそうだ。どうかしている。

一息に首を切断できる得物なんて、それこそ日本刀ぐらいの刃渡りが必要だ。

そう簡単に隠しきれるもんじゃない。

 

「俺みたいな一般人には理解の及ばない出来事が多すぎて、本当にどうかしちまったかもな。」

「だからそう言ったじゃないですかっ!!!!」

 

唐津の振り上げられた腕が日本刀のように形を変えたかと思うと鈍く光る刃が俺の頭に振り下ろされる。

犯人はヤス・・・・昔にあったゲームのフレーズを思い出した。

俺は驚くほど簡単に覚悟を決めた。

 

ジャキンッ!!!

 

「あぶないよぉ?」

「!?」

 

メメたんが顔色一つ変えずに、刃を腕で受け止めている。

そして俺の中では命の恩人に昇格した。

 

「お前大丈夫なのか?」

「何が?」

「なんで腕が切られないんだよ!?」

「メメたんだから!」

「そうか・・・じゃぁしょうがない!」

 

唐津らしき人物のみぞおちを全力で蹴とばした。

 

「とりあえずここから逃げるぞ!」

「ほーい」

 

メメたんの腕を握り、勢いよくドアを飛び出すと黒づくめの男たちが立ちはだかる。

 

「くそぉ!メメたん!ロケットパンチだ!」

「わかったぁ」

「できるのかよっ!?」

 

メメたんの腕が某アニメの必殺技の様に飛んでいく。

ドゴォーン!

凄まじい爆音と閃光が辺り一面を吹き飛ばした。

 

ようやく目が慣れて、辺りを見回すと数分前に居た船内だった。

 

「うわぁ・・・・・さっきと全く同じだ・・・・・」

 

 

 

つづく